2017-03-01(Wed)

この世界の片隅に。

かなり出遅れティアヌス感がすごいが、映画「この世界の片隅に」を観ようと思った。

もう10年以上前になるだろうか、原作者である漫画家・こうの史代先生の作品が好きで、単行本を買い集めたりサイン会に行ったりしていたことがあった。しかしいつの間にか先生の作品をチェックすることを忘れてゆき、「この世界の片隅に」も「漫画アクション」に連載が始まった時に少し気になっただけでスルーしてしまっていた。

改めてこうの先生原作のこの映画を観てみようと思ったのは、先生の絵柄の再現度が高そうなのと、あとはやはり評判がとにかく良い、というミーハー的気持ちがあった。

とはいえ嫁は特に興味がないし、子供向けの映画でもないしな、と思ったので、土曜日の午前中にひとりで行ってくるよ、と告げて出かけようとしたところ

「観たい!」

娘・R(中一)が付いてきた。Rもやはり評判が良いこの映画が気になっていたらしい。

この世界の片隅に
(渋谷のユーロスペース。実際に観たのはここではないけど、看板がでかかったので)

思いもよらず娘と映画デートとなりウキウキになった僕は、映画館でチケットを購入した後フードコーナーで

「なんでも買ってやるぞ、何がいいかナ?ポップコーン?チュリトス?」

メニューの高い順から全部買ってやるぞぐらいの勢いで浮かれポンチ。Rは

「いちごのクレープ!」

クレープスティックとかいうカワイイ選択であった。僕はホットコーヒーにした。

映画が始まると当然だがRと話すことはほとんどなく、スクリーンに釘付けだった。話の始め頃は戦時中とはいえ、まだ戦争はどこか他人事のようで、明るく楽しく主人公たちの生活が営まれている。しかし徐々に戦争の恐怖は身近になってきて、のどかだった生活の場を容赦なく破壊してゆく。爆撃音や銃撃音が耳に痛いほどであった。

また、この映画は出来るだけ当時の姿を再現しようとしていて、当時の写真などを参考にしているところも多い。物語中に遊郭のシーンが出てくるのだけれども、僕は遊郭跡地巡りが好きなのでそこは特に食い入るように観た。美しかった。

2時間ほどの映画はやがて終わり、僕は涙を流していた。余韻に浸っていたが照明が灯って席を立たなければならない。重い腰を上げて

「いやー、よかったね…パパは感動したよ…君はどうだった?」

と、Rに言うと、Rがまず口にしたのは

「なっが!」

であったのでずっこけそうになった。そうなのだ。これまでRが観てきた映画というのはポケモンとか妖怪ウォッチとか子供向けの尺が短い映画ばかり。大人向けの映画は初めてであり、内容もRにはまだまだ分かりづらいものであったようだ。

「こないだ原作のマンガ買ってきたから読みなよ」

「うん」

そんな話をしながら映画館を後にした。そういえば、Rはずっとマスクをしていたので

「ちゃんと予防してるんだな。偉いな」

人が多いところでは風邪・インフルエンザ予防のためにマスクをしなさい、と日頃言われていることをきちんと守っているんだな、と褒めたところ

「いや、マスクしてれば誰か知ってる人がいても自分だって気づかれにくいから」

「へ?」

「パパと一緒のとこ見られるのがヤダ」

ガーン。近所の映画館だったので同級生がいないとも限らない。違う意味での予防だったのだ。

僕は存在すら許されないのだろうか。

君の世界の片隅に、ぐらいには居させてほしい…。

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