2009-07-04(Sat)

涙が落ちる夜に

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真夜中、ヘッドフォンにて、主に

「ああん、ああん」

という類の喘ぎ声が聞こえてくるビデオを鑑賞していたところ、

「うわあああ…うわああああ…」

悩ましい喘ぎ声に重なって、呻き声が聞こえてきた。ウギャアアアアア。これはアレだ。心霊ビデオだ。昔よく曲に霊の声が入ってるってのがあった。ちょうど岩崎ひろみの「万華鏡」にはしゃがれた呻き声のようなものが聞こえてきたが、まさにそれに近い。うわあああ、おっかねええ!と思ってヘッドホンを外したら

「うわあああん!うわああん!」

よく聞いたら娘・R(5才)の泣き声だった。隣の寝室に飛び込むとRが寝床でわあわあ泣いているではないか。

「よしよし。大丈夫だよ〜」

抱き締めて背中をさすってやると、徐々に落ち着いてきた。涙がポロポロこぼれているのでそっと拭いてやる。おお、なんという可憐な娘よ。真珠の涙を浮かべたらオヤジなんてイチコロなのよねん。

「どうした?怖い夢見ちゃったか?」

と尋ねると首を横に振る。違うらしい。なんだろ。Rはまだ頭が半分寝ているようで、目を見開いて宙の一点を見つめていた。その視線の先に何か…。

もしかして幽霊とかオカルティックでスピリチュアルな感じなものを見ちゃった?ぎゃあああああ怖いいいい!Rの視線を恐る恐る追ってみた。今この暗闇の部屋の中に美輪明宏の顔が浮かんできたら、僕も本気で泣くが。

幸いなことに人の顔と呼べるものは嫁と息子・タク(3才)のマヌケ寝顔のみだったので一応安心した。

「そうか、目が覚めちゃったら真っ暗だしみんな寝てるし僕いないし、で怖くなっちゃったんだね」

と言うとRはコクリと頷いた。僕にも覚えがあるなあ…。小さい頃、なにかの拍子で目が覚めてしまう。まわりは真っ暗。いつも起きてるところしか見たことがない両親すら寝ている。自分だけ普段の世界から切り離された異界に放り込まれたようで、本当に怖かった。

Rもあの怖さを味わってしまったんだな。それなのにみだらなビデオとか観ててゴメンよ。でも許して欲しい。まさか君達が起きてる時に観るわけにはいかないから…。

「パパが横にいるからな。安心してお休み」

と言うとRは目をつぶり、再び眠りの世界に落ちていった。僕の手をぎゅっと握ったまま…。ようやく闇の怖さから逃れられたようだが、ゴメン。

本当に恐ろしいのは、Rが握っている僕の手。

ついさっきまでちんこいじってたんだけど…。

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2009-07-03(Fri)

義父は詩吟で僕ギンギン

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嫁父の趣味は詩吟である。

趣味というより師範だか師範代だか偉そうな感じの肩書きを持っており、家の看板にも「○○流 ▲▲××(詩吟ネーム)」が掲げられている程の肩の入れようで、本格的。

一度「詩吟リサイタル」なるライブを観たことがある。嫁父に見に来いと言われ、嫌々、いや、喜んで行ったものだ。どうせ学芸会レベルだろうとタカをくくっていたが、でかいホールでセットも本格的、出演者の衣装もきらびやか。

リサイタルは重厚な雰囲気で、擬音で表すと「どどーん」「もよーん」とした感じだったので、思わず寝てしまい危うく嫁父の出番を見過ごしてしまうところだったが、辛うじて目を開けて観ていたところ、嫁父は三国志みたいな格好で現われ、

「国〜敗れて〜山河あり〜」

みたいな漢詩を吟じていた。その姿を僕はどう受け取ってよいか分からず

「と、とりあえず『凄かったですね』って言っておこうか…」

リサイタル後に嫁父に求められるであろうコメントに苦しんだものであった。それが数年前のことであったが、

「お父さん、またリサイタルやるんだってさ」

今年もやるのだ、と嫁父の娘であるところの嫁が言った。

「えー。また諸葛孔明みたいなコスプレすんのか?」

「今年はもっと演劇の要素を取り込むんだって。今までは詩吟してるだけだったけど、今年は劇っぽくしてセリフもあるんだって」

「凝るのはいいけど、また観に来いとか言わないだろうなあ…」

あんまり観に行きたくはないけど、とりあえず

「お義父さんは何の役をやるの?」

と聞いてみたら

「小浜市長」

「は?」

「小浜市長になって、『ハーイ、マイネームイズオバマ、Yes!We Can!』って言うんだって」

「ベタベタなギャグじゃねーか!」

そのネタからどう詩吟に繋がるというのだ。

「で、その詩吟劇のタイトルが『一休さん』なんだって」

「全然わかんねー!」

オバマからそのタイトルにどうやって繋がるというのだ!

「これ一休。屏風の虎を退治してみよ」

「Yes!We Can!」

うーん、ちょっと違う。

「大統領!、北朝鮮のミサイルに対して対策を!」

「あわてないあわてない。ひとやすみひとやすみ」

うーん、休まれてしまっては困る。

「どーもー。巨乳デリヘル『モンデミーテ』でーす」

「Change!」

うーん。もはや一休さん関係ない。

詩吟劇で小浜市長(ニセオバマ)の役、そしてタイトルが一休さん…。なんだかとてもカオス。うすた京介並の不条理さである。逆に観てみたくなるではないか。

とりあえず僕もひとつ、吟じます。

嫁から送られたメールに〜。

ハートのマークが付いてたりすると〜。

なんだか今夜は出来そうな気がする〜。

あると思います!

(でも出来なかった)

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2009-07-02(Thu)

乙女の折り祈り

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朝、仕事に行く前に

「折り紙で手裏剣作ってー」

と娘・R(5才)にねだられた。子供の頃はよく作ったものだが、もう作り方など忘れてしまっている。インターネッツで作り方のページを見てみた。朝のこのクソ忙しい時間に…と思いながら作ってみたらなんとか出来た。

「ほいよ」

と渡すと

「たっくんにも作ってー」

息子・タク(3才)もおねだりしてきたのだが、もう時間がなかった。

「ゴメンもう会社行かなきゃ」

「ぶわあああああああ!」

断るとタクは号泣。そりゃそうだよなあ。

「でもホントギリギリなんだよ、ゴメン!嫁、頼む!」

嫁に託して慌てて会社に行かざるを得なかった。

翌朝、再びRが

「折り紙で風船作ってー」

とおねだり。

「どうしていつもギリギリで言うんだああああ!」

もっと早い時間から起きてて今までずっとオモチャで遊んでたくせに!Rに作るとタクにも作らなければならない。すると時間が足りなくなり昨日同様の修羅場になることは目に見えて明らか。

「明日作ってあげるからね!」

「ええー」

不満そうなRとタクを残して会社に出掛けた。そして仕事から帰って来た夜。朝のバタバタした時間に折り紙なぞ作ってるヒマはないと考え、

「父さんが〜夜なべ〜をして、おりがーみ折ってくれた〜♪」

自分で歌って折り紙で風船を2個作成した。

で、またその翌朝。

「ほら、作ったぞー」

ふたりに風船を渡してやったところ

「わー。やったー」

と受け取り、ポンポンと跳ねさせて遊んでいた。しかし2分後、他のオモチャで遊び出す。

「それで終わりかーい!」

やはり「作って」と言われたその場でないと、「折り紙遊びたいテンション」がいまいち低いんだな…ということに気付いた。

すなわち、僕は折り紙折って、無駄骨折った…。

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2009-07-01(Wed)

あんた背中が煤けてるぜ

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「ランドセルを買う」

と嫁が言った。娘・R(5才)は今幼稚園年長であり、来年小学生である。ああ、子供の成長というのは早いものだなあ…。

ランドセルを背負ったRを見てみたいけれども、パパパパとベッタリ甘えてくる可愛いRがだんだん僕の元を放れて行ってしまう…という寂しさがある。卒業はしたいけどみんなとは別れたくない、みたいな卒業式の寂しさに似ているような気がする。世の親は子供の成長を見る度にこの感覚を味わっているのだろう。

「でもそれにしちゃ早過ぎないか?」

まだ6月だというのに、あんながさばるモノを今から買っておいたら邪魔である。しかし嫁が言うには

「今バーゲンで安いの!」

ということなので電車で池袋のランドセル屋に向かった。電車を降り、駅のエスカレーターに乗る。すると僕の一段前に乗っていたRがクルリと振り返り、

「ランドセル買うの、とっても楽しみ」

上目遣いでニコッと笑った。あたしゃその笑顔にノックアウトされちまっただよ。子供が全力で楽しみにしている姿。親をやっててよかったと思える瞬間である。

店に着くと、まー色んなランドセルがあるわあるわ。黒、赤、茶色、水色、ピンク…。ランドセルレンジャーが出来るほどの多彩な色。中にはフチの色が違うツートンカラーもある。

「Rちゃんはどの色がいいのかな?」

と聞いてみたのだが…、息子・タク(3才)と店内にあるオモチャに夢中になって遊んでおり、呼んでも来やしない。

「とっても楽しみって言ってたろー!」

あの時の僕の感動を返せ、とばかりに強引にオモチャから引き離し、色を選ばせたら

「これ」

濃い目のピンクがいいと言う。店員に聞くところによると、女の子は赤よりこの系統を選ぶ人が圧倒的に多いそうだ。

R
何種類か背負わせてみた。

タク
まだ早いがタクも。

色は決まったが同じ色系統でもいくつか種類がある。値段も違う。店員に細かいところの説明を聞いてみると、親としてはできるだけよいものを買ってやりたいところだったが、Rが選んだのは一番安いものだった。

「えーこっちにしない?刺繍がカワイイし、モノがいっぱい入るよー」

と説得したのだが

「こっちが軽いから」

Rはどれが軽いか、で選んだようだった。なるほど、クラスで一番小さいRらしい選択だな…と思いそれに決めた。

思い出してみると、僕のランドセルはとても安っぽいものであった。みんな本皮でツルツルピカピカしているのに、僕だけ合成のザラザラ。母が言うには、僕も背が一番小さい方だったので、一番軽いものを選んだのだという。

理由は尤もだが、僕もピカピカのものが欲しかったな…と最後にもう一度店のランドセルたちを眺めながら店を出ると

「パパ、おんぶ」

既に僕にはランドセルより重い背負うものがあったわ!こういうオチかよ!しかし…こうして甘えてくるのも今の内なんだろうな…ランドセル背負う年頃になったらとっととひとりでどっかに行ってしまうのだろう…。

色々なことを考えつつ、Rの重みを感じながら駅まで歩くのであった。

ランドセル 色んな思いが ウチヨセル

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2009-06-30(Tue)

愛別離苦・怨憎会苦・求不得苦・五蘊盛苦・キムタ苦

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あれは土曜日のことじゃった。

夜、ゴハンを食べた後は子供達に歯を磨かせてトイレに行かせて寝かせるのが僕の役目。嫁はその間入浴&風呂掃除である。

この日もとっとと寝かせようとしたのだが、娘・R(5才)も息子・タク(3才)も妙に興奮して寝やしない。

「ふりすびーだー!」

ままごとに使うオモチャの皿をフリスビーに見立てて投げ合いするし、タクなどは寝室を抜け出して風呂場に行き

「ママ、キムタク録った〜?」

嫁が毎週欠かさず録画しているキムタクドラマ「Mr.Brain」をちゃんと予約してるか、とか余計な世話まで焼いている。

「おまえらいい加減に戦艦ポチョムキンー!とっとと寝ろ!」

さすがの僕も堪忍袋の緒が切れ、子供達を寝床に連れ戻し、必殺どうぶつクイズ攻撃や必殺昔話攻撃にてようやく寝かせることに成功した。

子供達が寝静まってからしばらく、嫁が風呂場から戻って来たかと思ったら、

「うわああああああ!キムタク録り忘れたああああ!」

と壮絶な悲鳴をあげるではないか。

「さっきタクが風呂場の扉の前で叫んでたぞ?」

「えー?こっちは水ザーザー流してお風呂洗ってるんだからそんなの聞こえなかったよう…」

「来週観りゃいいじゃん」

1回ぐらい飛ばしたっておおむね大丈夫だべ、と軽い気持ちで言ったら

「あのドラマを見て来週も頑張るって思えるのよー!私の心の糧なのよー!」

とかわめき出した。とりあえず放っておいた。

翌朝も嫁は「キムタクが…」と嫁しょぼくれていた。

「ママどうしたの?」

Rが心配そうに声を掛けると

「ママね、キムタクのドラマを録り忘れちゃったの。いつも土曜日にMr.Brainを観て、夢の中でキムタクに会って、それで来週もまたがんばろーって、それだけがママの励みなのよーッ!」

昨晩僕に言ったことと同じ心の叫びをぶちまけていた。お前、それ、僕の前でならまだしも子供の前で言うか。

「Rちゃんよりキムタクの方が好きなの?」

って思っちゃうだろうが!子供の前でそんなこと言わないの!

とか言ってー。

会社の人からビデオを借りる手配を取ってしまった。明日借りられるんだけど、どうしよっかなー。タダで嫁に見せるのも芸がないなー。体で払ってもらおうかなー。Mr.Brainだけど、

ノー(脳)とは言わせない!とか言ってー。

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